猫にとって腎不全とは決して珍しい病気ではありません。
「最近よく水を飲むようになった」「何だか元気がない」そんな時は腎不全の可能性があります。
まずは病気について知ることが、愛猫の健康を守る第一歩となります。
猫の腎不全とは？
腎臓の主な役割
腎臓は体内の血液をろ過して必要な水分を吸収し、老廃物を排出する役割を担っています。そのほかにも、血圧を調整するホルモンや骨を丈夫にするホルモンを分泌したりしています。
腎不全は何らかの原因で、腎臓が正常に働かなくなる状態です。
猫の腎不全には急激に悪化する「急性腎不全」と、ゆっくりと進行する「慢性腎不全」があります。特に慢性腎不全は高齢の猫で発症が増えることが知られており、長期的なケアが必要になる病気の一つです。
この記事では、慢性腎不全について知っておきたいポイントを解説していきます。
腎不全の原因
慢性腎不全の発症原因は、まだ解明されていない部分も多いです。最近の研究では、血液中にある「AIM」というタンパク質が原因の一つである可能性が示されました。
AIMは腎臓のゴミを掃除する働きがあるのですが、猫は他の動物に比べこの働きが弱く、腎機能が低下しやすいのではないか、と考えられています。
その他にも、遺伝的要素や加齢、飲む水の量が少ない、食事による栄養バランスも関係していると言われています。
また、急性腎不全の治療が遅れることで、慢性化することもあります。
症状やサインはある？
猫の腎不全でよくみられる症状には、次のようなものがあります。
- 水をたくさん飲むようになった
- 薄いおしっこをたくさんするようになった、回数が増えた
- 食欲が落ちた、やせてきた
- 毛づやがなくなった
- 元気がなくなった
- 嘔吐や下痢をするようになった
- 口内炎や口臭が出てきた
このような症状は、腎臓の機能が落ちることで必要な水分が吸収されず、体内に老廃物（毒素）が溜まることで引き起こされます。腎臓は機能が落ちても、初期はほとんど症状が出ません。食欲低下や嘔吐など明らかな症状で気づく頃には、腎臓の機能の50％以上が失われている可能性もあります。水をよく飲むようになったなど、普段とは違う行動が見られたら、早めに病院を受診するようにしましょう。
治療法について
一度失われてしまった腎臓の機能はもとに戻すことは出来ません。そのため、治療では進行を緩やかにして、生活の質を維持していくことを目指します。
治療内容は腎不全の進行程度により変わりますが、基本的には食事と点滴がメインとなり、必要に応じて薬やサプリメントを使用します。
食事
腎臓用の療法食に切り替えます。療法食はタンパク質やリン、ナトリウムといった成分を制限することで、腎臓への負担を減らします。腎不全の初期段階から食事を切り替えることが、進行を遅らせることに効果的だと言われています。
また、常に脱水状態にあるため、水分をたくさん摂ることも大切です。水のみ場を増やすなど、常に新鮮な水が飲めるように工夫をすると良いでしょう。他にも、猫は動きのある水を好んで飲む傾向にあるので、流水式の水飲み装置を設置するのもおすすめです。
点滴
猫の点滴方法は、「静脈点滴」と「皮下点滴」があります。猫は人間と違って、皮膚がかなり伸びるため、皮膚の下に点滴が出来ます。皮下に溜まった水分は、時間をかけて吸収されていきます。基本は通院での治療となりますが、慣れてきたら自宅で飼い主様ご自身が点滴することも可能です。
腎不全が進行し、体内の老廃物が過剰に溜まってしまった場合は、静脈点滴を行います。こちらは入院が必要となります。血液検査で腎臓の数値が下がり、食欲が戻れば皮下点滴に切り替えます。
薬・サプリメント
腎不全の進行で現れる症状に応じて、薬やサプリメントを使用します。活性炭などの薬やサプリメントは、体内のリンを吸着します。
また、高血圧が生じた場合には血圧を下げる薬を使用し、腎臓にかかる負担を減らします。
さいごに
猫は腎不全になりやすく、一度発症すると完治が難しい病気です。日頃から愛猫の様子に目を配り、気になることがあれば動物病院へ相談しましょう。
また、健康なうちにかかりつけ医を見つけたり定期健診を取り入れたりすることも、予防と早期発見のためにおすすめです。